シンジケート 穂村弘のデビュー作を改めて読んでみた

シンジケート新装版が売っているのを本屋で見掛けたので、買って改めて読んでみた

シンジケートは穂村弘のデビュー作で、その新装版が今年発売になり、昔図書館で読んだことはあったのだが、本屋さんにあったので買って、改めて読んでみたのですが、やはり素晴らしかった。

終バスに二人は眠る紫の『下りますランプ』に取り囲まれて

このような甘くて切ない短歌が今読んでもみずみずしく感じるぐらい、ポップかつ陰のある感じに描かれていて、古さは全く感じられなかった。

この歌集、小説家の高橋源一郎さんが当時絶賛をしていて、『俵万智のサラダ記念日が2百万部売れたのなら、シンジケートは2億冊は売れてないとおかしい。分かってないね世間』みたいなことを評論として残しているのだが、今回、その高橋さんが新装版の解説も書いていて、その言葉にもしびれました。

高橋源一郎さんが書いたシンジケートのすごさ

高橋源一郎さんの解説によれば、シンジケートは1989年から発売をされた1991年の日本の空気感が、読者に寄り添う形で残っているとし、その頃の日本はバブル崩壊直前直後で、昭和天皇が亡くなったり、手塚治虫や美空ひばりが亡くなった頃と重なり、しかしバブルの残り香はあるのでファミコンで遊んでいた時代の、証拠みたいな形がシンジケートだと述べている。

そしてある評論家の「日本で唯一小説を書いているのは村上春樹だけである」という、村上春樹の社会の空気感を読み取り、読者と寄り添っている小説を書いているのは村上春樹だけだという評論の言葉を借り、高橋源一郎さんは当時の文芸評論で書いていなかった一文があるとして、新装版の締めくくりをこんな言葉で終えている。

日本で唯一短歌を詠んでいるのは穂村弘だけだ

日本で唯一短歌を詠んでいるのは穂村弘だけだ この言葉にしびれたわけ

この高橋源一郎さんの『日本で唯一短歌を詠んでいるのは穂村弘だけだ』という一文、何がしびれたかって、僕もこのシンジケートを大学時代だから2000年頃初めて読んだのだが、今の目線から見ても新しいし、アホな僕にも分かるなんて優しい歌集なんだと思ったからだ。

それから他の歌集も読んで色々好きな歌人もできたが、このアホな僕にも分かるというのが、高橋さん的には読者に寄り添っているということであろうし、そんな読者に近い距離間で短歌を詠んでいるのは、確かに穂村弘だけかもしれないなと深く納得したからだ。

千三百年の歴史がある短歌で、今『日本で唯一短歌を詠んでいる』歌人、穂村弘を知らない方はもったいないので、ぜひ読んでみてください!

written by 就労継続支援B型事業所 ユアライフ新大阪