枡野浩一さんをおすすめ!

枡野さんはどういう人か

今回、おすすめしたいのは歌人、枡野浩一さんです。

短歌が教科書に載っていたり、踊るさんま御殿に出たこともあるので、存在は知ってらっしゃる方もいるかもしれませんが、歌人としての存在感が薄いのが納得できないので、今回は紹介したいと思います。

枡野さんが歌人としての存在が薄い理由は二つあります。

一つは歌壇(短歌業界のこと)から完全に離脱していること。
1995年に角川短歌賞(俵万智さんなども受賞したことがある歴史ある新人賞)に送った時に、座談会前の評価では五人中四人が最高点を付けていたのにも関わらず、なぜか落選してしまったことに腹を立てて、それ以降歌壇から身を引いて活躍してきたのが、歌人としての評価が歌人内で上がらなかったこと。

もう一つは枡野さんのスタイル、完全口語短歌がまだまだ歌壇で評価が低いところです。
『誰からも愛されないということの自由気ままを誇りつつ咲け』
『無理してる自分の無理も自分だと思う自分も無理する自分』
このような代表歌にも表れているように、昔の言葉、文語調は一切使わずに、みんなが普段使う言葉遣いを徹底しているのが、若い人たちは口語調の人が大多数ですが、まだ文語調も残る歌壇の文化にあっていないからだと思っています。

しかし僕が枡野さんの歌にひかれたのは、この普段の話ことばで歌ってくれる、分かりやすさだったのです。

枡野短歌との出会い

枡野さんの短歌と出会ったのは、大学生の時(のちに中退)どうしても回りの人と合わなくて、友達もできず辛くて、大学に行かずに毎日、図書館へ逃げ込んでいた時でした。(のちに38歳の時、発達障害、自閉症スペクトラムだと診断されました)

その時の自分は、かなり落ち込んでいて、日本の小説は暗いのが多いので読む気にはなれず、エッセイを本棚の片っ端から読んでいた時でした。
その時、枡野浩一さんのエッセイ「君の鳥は歌をうたえる」と出会い、とても面白かったので、この人はどういう人だろうと思っていたら、歌人でした。

歌人。そのころの僕は歌人といったら万葉集みたいな小難しい歌か、比喩表現がぶっ飛んでいる歌を詠んでいる、そんな頭の悪い僕には分からない人たち、みたいな印象を持っていたので、俵万智さんぐらい分かりやすかったらいいのにな、みたいな気持ちで初期ベスト短歌集(枡野さんは、一般人には分かりにくいだろうから歌集という言葉を使っていません。その辺のところも分かりやすさを徹底していると思います)ハッピーロンリーウォーリーソングを買ってみました。

するとそれまでの歌人とのイメージとは全く違う、分かりやすさ、手の届きやすさに感動しました。
『真夜中の電話に出ると「もうぼくをさがさないで」とウォーリーの声』
頭の悪い僕でも言葉が突き刺さる、分かりやすさにひかれて、すぐにファンになりました。

コピーライターの糸井重里さんは枡野さんの歌を「かんたん短歌」と名付け(回文になってます)自身のホームページで連載していたそうですが、納得の「かんたん」です。

枡野短歌の良さについてのまとめ

しかし、その分かりやすさが分かりやすすぎると受け止めれているのか、歌壇からは評価されず、受賞歴などはないのが、ファンとしては納得いきません。

僕は分かりやすいが罪ならば、分かりにくいのも罪だと思っています。頭のいい人が頭のいい人だけに伝わるように、小難しく歌われた短歌に、僕は興味をひかれません。

頭の悪い僕でも伝わるように「分かりやすい」にこだわった、枡野さんの姿勢自体が好きです。

この歌壇に評価されていないというせいもあるのか、枡野さんの短歌集はあと「ますの。」ぐらいしかなく、漫画家の南Q太さんと結婚したが離婚したり、一時期、芸人をやっていたという経歴があったりして、ファンとしてはもっと枡野さんしか作れない「分かりやすい」短歌をもっと読みたいのが本音です。

しかし、待つのもファンの仕事だと思っているので、次の短歌集を期待して待っています。

では最後に僕が枡野さんの歌で一番好きなヤツを紹介して、この書き込みを終えたいと思います。

『もう愛や夢を茶化して笑うほど弱くはないし子供でもない』

written by 就労継続支援B型事業所 ユアライフ新大阪