穂村弘をおすすめ!

穂村弘はどういう歌人か

歌人、穂村弘は1986年角川短歌賞の次席になって(ちなみにその年の受賞者は俵万智)歌壇デビューをした人で、現在も雑誌ダヴィンチで連載を持つなどしている、現在の歌壇のトップランナーと言ってもいいぐらいの歌人です。

穂村は1990年代に加藤治郎らと共に、ニューウェーブと呼ばれる運動の中心人物の一人として語られており、その歌壇におけるニューウェーブとは、昔ながらの文語短歌は止めて、口語短歌で行こうという新しい波でした。

『終バスにふたりは眠る紫の<降りますランプ>に取り囲まれて』
『ほんとうにおれのもんかよ冷蔵庫の卵置き場に落ちる涙は』

このような代表歌にも表れているように、みんなが現在使っている話し言葉である口語調で詠まれた短歌なので、とても分かりやすく予備知識がなくてもダイレクトに感動が味わえる歌人が、穂村弘です。

穂村弘との出会い

穂村弘との出会いは、前回紹介した枡野浩一(読んでいない方はぜひ枡野浩一のブログも読んでください!)が、エッセイでライバル視しているのを見て、枡野がライバル視しているような人なら穂村も面白いに違いないと思い、図書館で処女作「シンジケート」と読んだのですが、一瞬で心を奪われました。

『サバンナの象のうんこよ聞いてくれだるいせつないこわいさびしい』

このような孤独を感じさせる作風に、当時ハタチで最後一人だけいた友達とも絶交になり(ちなみに四十歳になった今でも友達はいません。えーん)大学に馴染めずにサボって、一人図書館ばかりに行っていた僕にとって、心のコップに水が注がれ満杯になって零れるような感動を味わえました。

その後、穂村の短歌初心者への入門書「短歌という爆弾」(でもこれは入門書としては難解な本)のあとがきで、思春期時代周りと馴染めずに苦しんでいたという経歴を見て、ああ、僕と同じだと勝手にシンパシーを感じ、枡野と並ぶ大好きな歌人になりました。

最後に猛プッシュ

穂村はニューウェーブという新しい波の代表者として歌壇に入ったせいもあるのか、最初は先人の歌人に酷評されるということもあったそうです。しかし、穂村はめげずにエッセイや現代短歌評論書など積極的に執筆をして、徐々に評価を上げていき、現在の歌壇におけるトップランナーとなりました。

穂村の著作は、2冊目の歌集「ドライドライアイス」までは、短歌のお約束でもある一人称文学、すなわち作者が主役という形で作品が作られていましたが、3冊目の歌集「手紙魔まみ、夏の引っ越し(ウサギ連れ)では、主人公がまみという少女が詠んだという形で作られた作品となっており、キュートな挿絵も手伝ってか、切実な絵本と表現したいような新しい歌集となっていて、今読んでもその素晴らしさは変わらないと思います。

それから17年間の長き時間を経ち発表された4冊目の歌集「水中翼船炎上中」は、今度は子供時代からさかのぼって、昭和の香りをぷんぷんさせながら進み、平成を経て、母親の死を受け止め、今へと続くという超大作になっており、読みごたえは抜群です。

このように穂村の歌集は4冊しか出ていないので、短歌は現在ジャンルとして勢いがないせいか、大きな本屋さんでも売ってない場合が多いので、図書館かネットで買うしかないと思いますが、どんなジャンルにおいてもトップランナーの息遣いを感じることは、とても刺激的なことだと思いますので、機会があればぜひ読んで欲しいです!

written by 就労継続支援B型事業所 ユアライフ新大阪