日本人と神さま

素敵な本との出会い

神様の御用人という小説をとても面白く読みました。
主人公のフリーターの良彦が亡き祖父の縁から神様の悩みを解決する神さまの御用人の役目をキツネの神である黄金とともにうけおい解決に導いていくというあらすじなのですが、ここに出てくる神さまはどの神さまも人間と同じように悩み、泣き、怒り、傷つきます。
かつて古代では、神さまは人間と共に己の存在を高めあうことができていました。
しかし、昨今の人間はみな一方的に祭祀も行わないのに神さまに困ったときだけすがるというのが一般的になってしまっています。
そのせいで神さまの力は弱まり本来の姿をとどめることすらかなわない現状です。

神さまとは何か

現代の若者のようにゲームに興じながらひきこもる神さま、プレイボーイで浮気癖がすぎたのがたたって奥さんに家出されてしまう神さまなどちっとも神さまらしくないところがほほえましいです。
けれど、神さまだからできることや神さまでしか抱えない悩みというのもあって古代の八百万の神々の知識が楽しみながら得られる良作に仕上がっています。
良彦と行動を共にする黄金は見た目はかわいいキツネで甘いものに目がないスイーツ好きという愛くるしい神さまです。
しかし、己ではそれを断固認めず神さまらしくふるまうよう心掛けているようです。
神さまでさえ悩み、苦しむ。
そんな姿を見ていると読者が現実で不安にさいなまれたりしていても少し気分が軽くなるのです。
人は小さい。
けれど、人だからこそできることがあり、生きる喜びがある。
そういったことを痛感させられるとてもいい本と出逢えました。

神さまとどう向き合うか

神さまはいざというとき都合よく助けてもらう存在ではなく共存して身近な人と同様、思いやるべき相手だとこの御用人シリーズはおしえてくれました。
主人公の良彦の人となりも優しく誠実で好感がもてます。
コミカライズとしてもでている作品なので活字が読めないという方はそちらで見てもらっても大丈夫です。
私は日本人のいいところの一つに相手のものを尊重できる点があると思っています。
文化の違いではあるのですが、特に西洋では自分の信じる神さまや宗教は絶対的でありそれ以外は決して寄せ付けない排他的な面があります。
それに対して、日本はあらゆる宗教を受け入れ仏教以外は認めないということはありません。
宗教自体が廃れてしまっているという見方もありますが、信仰は強要されるものではありませんし、何を大切にするかは個人の自由にゆだねるべきだと思います。
祖先などへの敬意や感謝と亡くなった人を悼む気持ちがあればそれでいいはずです。
神さまの御用人は人にも神さまにも優しい視点が描かれ感動的です。

written by 就労継続支援B型事業所 ユアライフ新大阪