僕も偏見を持っていた岩田さんの病気
今回は元阪神タイガースのピッチャー、岩田稔さんが『消えそうで消えないペン』という自叙伝を出したので、それを読んだ感想を書いていこうと思います。
岩田さんはドラフト一位で阪神に入ったので、入団当時から注目をしていました。
まずその時に学んだことは、糖尿病は1型と2型に分かれ、糖尿病といえば生活習慣病かなと思っていたら、そうではない1型糖尿病があるということです。
遺伝的な1型糖尿病は現在のところ完治をする病気ではなく、血糖値を維持するため注射を日常的に打たないといけないことで、岩田さんは一日で四回も打たないといけないという苦労を、ニュース映像などで見て、大変そうだなと思いました。
そして僕が思ったことは、こんな病気持ちの選手をドラフト一位で取って、阪神は大丈夫なのか? ということでした。
これが偏見だったのはプロ生活十六年間で60勝をあげる成績を残したことでも、十分に証明されています。
野球評論家の小関順二さんも、プロとして成功といえる成績は先発だと50勝以上だと定義をしているので、岩田さんは立派な成功選手です。
それなのに病気を持っているということだけで、偏見を持ったのかといえば、ひとえにこちらの知識不足があるからでしょう。
そんな偏見をなくしたいということで、プロとして頑張った功績を書いているのが、この『消えそうで消えないペン』です。
知識不足が悲劇を生む
この本では、まずガリクソン賞を取った喜びからスタートをしています。
高二の冬に1型糖尿病にかかったことを知った岩田さんは入院をし、もう野球はできないのではないかと絶望に立たされます。
しかし、お医者さんからガリクソンというメジャーのピッチャーも、その病気になりながらもプロとして活躍をした選手がいると聞かされ、自分もまだ野球がやれるという希望を持ちます。
それなのに、高三でまた絶望が待っていました。私立の大学だとお金がかかるから、社会人野球で給料をもらいながら選手として頑張りたいと思っていたのに、内定をもらっていた社会人野球球団から病気のことで差別を受け、内定を取り消されるという事態に立たされました。
そうなのです。僕が初めて岩田さんのニュースを触れた時と同じ感情、1型糖尿病は運動とかにも影響を与えてしまうのではないかと、社会人野球チームの人達も偏見を持ち、差別が生まれてしまったのです。
この本には1型糖尿病は、一日複数回の注射を、岩田さん場合はお腹に刺して打たないといけないというハンディーがあるものの、それ以外は普通の人間と変わらない生活が送れることが書かれています。
そのことは賞まであるガリクソンや、何より岩田さんが証明をしています。
そんな偏見をなくすために、現役をやめた後も、病気への理解を深めるための普及をライフワークにしていることが、今の岩田さんの現在地だと本の中で触れられています。
死ぬこと以外はかすり傷
そんな病気と戦えることを証明するため、プロとしてヒリヒリするような、一年一年が勝負のだという覚悟で頑張ってきたことが書かれているこの本。
タイトルの『消えそうで消えないペン』というのは、2軍暮らしが続いて、やっと一軍で勝てた時に、自分は消えそうで消えないマジックペンだという例えとして、ヒーローインタビューで言った発言がタイトルになっています。
その消えそうで消えないマジックペンは、コロナで気力が減り、十分に出し切ったということで引退をして、もう現役には興味が無いようで、それよりも1型糖尿病の世間の理解を深める活動をしたいというのが、現在地だそうです。
そんな本書の中で、一番僕が気にいったフレーズが、病気のことを乗り越えるために思いついたいう、死ぬこと以外はかすり傷という言葉です。
このフレーズを読んだ時、僕も発達障害の疑いがあると診断をされ、日々悩んでいる心に、スパッと響きました。
このような心に響くフレーズもある本書は、1型糖尿病の勉強にもなるし、病気を持っている人にも希望を与える内容になっているので、ぜひ手に取って読んでみることをお勧めします。
色々なことで悩んでいる方、死ぬこと以外はかすり傷です!