メルクリンの基本セット
私の幼少時に父が阪急百貨店でドイツ製の鉄道模型、メルクリンの基本セットを買ってきた。私のためにと言う名目で買ったらしいが、父の一月分の収入ではなかったろうか。几帳面な父は私に丁寧な取り扱い方を熱心に教えてくれる。父にとって相当欲しかったのであろう。小さなタンク蒸気機関車と客車二両、直線レール2本を一周できるだけの曲線レール4本、コントローラーだけのシンプルなセットである。私が喰いつくように基本セットを眺めて、父がコントローラーで慎重に機関車を走らせる。
日本のHOゲージ鉄道模型は直流2線式。左のレール、右のレールの極性をプラス、マイナスと切り替えることで機関車の走行方向を変える。メルクリンは交流3線式。左右の線路の間に枕木の隙間を貫いて点接状にもう一本のレール(道床の中央部に目立たない形でわずかに突出している点接式中央レール)から機関車の床下の集電シューを通ってモーターに送られ、モーターから車体と車輪とをへて左右のレールに送られ、再び電源(トランス・コントローラー)に戻る。
鉄道模型の秘密
機関車の運転
アナログ走行ではトランスの電圧を4ボルトから16ボルトに変化させることにより列車のスピードをコントロールすることが出来る。進行方向を変更したい場合はトランスを次の要領で操作すればよい。機関車に内蔵された逆転器がトランス操作一つで作動して、機関車は進行方向とは逆に走り出す。
変更の操作
トランスのレバーをいったん0(停止)に戻す。0から左へ約一秒以内動かすとその瞬間だけ過電流が流れ機関車内の逆転器(リレー)が作動するしくみになっている。電圧を変化させれば、望むスピードで逆方向に進んでくれる。
自動連結解放器
機関車によっては自動連結解放器(テレックス連結器)を取り付けてあるものがある。トランスの逆転レバーを操作すれば、逆転→連結解放→逆転→連結解放と線路上どんな位置でもリモコンで車両の切り離しが出来る。これによって、ハンプによる貨車の転送作業も入れ替え作業なども実物の機関車そっくりに楽しめる。
メルクリン独特の連結器
自動連結器は、一方の車両の前部を他方の車両の後部に連結するだけで、安全にしかも完全に連結されるようになっている。解放は、解放用レールを使用して、リモコンあるいは手動のいずれかで行うことができる。
作動の原理が自動連結器とまったく同じテレックス自動連結器もメルクリン独特のメカニズム…。いったん解放してから、そのまま車両を押しいっても、連結装置はふたたび作動しないようになっている。
ゲージとスケール
ゲージとスケール
ゲージとスケールという言葉は、実物に忠実な、模型やレイアウトを作ろうとするメーカー、それを求めて使用する鉄道ホビースト(以下、鉄道模型を趣味とする人7をいう)で絶えず使われている。
「ゲージ」とは、両サイドのレールの内側の寸法で、一般的標準ゲージは1435ミリとなっている。
各国が使用している鉄道のゲージ(レール幅・軌間)は、日本のJR在来線は狭軌であるのに対してヨーロッパの主要国は広軌である。
スケールとは、模型の大きさと、実物あるいは模型で表現された対象物の大きさの比率をいう。たとえばⅠ/32で示された場合、
実物の長さ 9.6メートル
模型の長さ 30センチ
ということになる。
しかし、世界の鉄道模型のほとんどが1435ミリという縮尺には不便な数であるためゲージのスケールとメカニズムのスケールとメカニズムのスケールを画一的に定めることは出来ない。本来ならば、ゲージもスケールとメカニズムも、縮尺比率は同一に定めるのが望ましい・しかし現実には、実際のヨーロッパ・ゲージは前述のように縮尺しにくい数字を持っている。そこで、模型の縮尺比とゲージの縮尺比をそれぞれ別個に定めなくては…、という特殊な問題が出てきた。
メルクリンのモデルはスケールを1/87に定めているが、日本の国産モデルはスケールを1/80(一部広軌は除く)に定める。と、いうように。
メルクリンの模型鉄道は、HOゲージを使っている。すなわち1435ミリ÷16.5≒1/87と、標準ゲージの1/87で作られている。