漢方について

女医さんの話①

 幼馴染から西洋の薬ばかりに頼っていないで東洋医学にも目を向けるようにアドバイスを受けて、京都の漢方医に一緒に通う様になりました。
 以前そこの女医さん主催の「薬膳料理」のランチを頂きに行ってそのおいしさに驚いたのと、難病に苦しむ友人を幼馴染が連れていき、女医先生のカウンセリングを聞いて感心したので一度受診しようと思ったからです。
  飲食について。消化しやすいものはOK。
菜食 (
ベジタリアン)、食物繊維が多い食事、栄養がありかつ消化吸収しやすい野菜、白湯(さゆ)
 少なくするものは、辛い物、焼いたもの、生もの、冷たい物、魚介類、乳製品
 禁忌はたばこ、酒。大便を正常化する。
 薬膳:大根青果飲、蓮子湯、緑豆黒豆湯、大根と蓮根のスープ
 発物(アレルギーを悪化させるもの)は禁止。魚介、カニ、フナ、イカ、エビ、青魚、黒魚、酒、ピリ辛のもの、卵黄、スッポン、きな粉、ピーマツ、香菜、ネギ、唐辛子、ニンニク、脂っこい物、ニラ、辛子、カレー、ウナギ、羊肉、山椒(花椒もだめ)
 なにより、禁酒を言い渡されたのにはまいった。もっとも長い闘病のあいだアルコールを口にしなかったので、すっかりお酒に弱くなったので丁度よい。禁酒を言われていたのに調子に乗って飲酒したら転倒してオデコを地面に打って怪我をして、救急搬送された。以来飲酒は一切していない。
 漢方薬は「生薬」と呼ばれる、自然界に存在する植物、動物や鉱物などの薬効となる部分を通常は複数組み合わせて作られる。例えば、生薬の桂皮(ケイヒ)、芍薬(シャクヤク)、大棗(タイソウ)、甘草(カンゾウ)、生姜(ショウキョウ)を組み合わせて「桂枝湯(ケイシトウ)」という漢方薬が作られる。
 漢方医学では、患者さんを心身両面から総合的に捉え(とらえ)治療するという全人的医療の考え方があり、また人間が本来持っている自然治癒力を高めるという考えがある。そのため漢方薬は体質に由来する症状(冷え症、虚弱体質など)や検査に表れない不調(更年期障害)の治療に効果がある。生薬の組み合わせが変わると、ある生薬の薬効が増強されたり毒性が仰制されたりして有効性や安全性が大きく変化するのが特性だ。つまり漢方薬としての薬効は、個々の生薬の薬効の総和でなく、構成生薬の組み合わせによって得られるものである。
 一度その漢方の女医さんが主宰した薬膳料理のハーティーに行ったことがある。テーブルに持て来られる一品一品の料理の解説を拝聴しながらいただく。薬らしさのない美味しい料理なのには驚いた。
以下はその漢方医の著書「東方栄養新書」からの抜粋である。
東洋医学と西洋医学の違いとは疾患や体のとらえ方である。
 西洋医学では患者の症状や訴えを聞き、様々な検査方法を用いて、考えられる病名を診断し、その病気あるいは病原菌などに対して治療方針をたてる。検査値の正常化が治療の重要なポイントとなる。薬や手術が病原菌などと戦う主戦力となり、局部の病気は主にその部分だけの病変と認識され、薬や手術でその部分の治療のみに力を注ぐ。
 一方東洋医学では、病気は体のある部分だけの病変ではなく、五臓六腑の全ての機能につながった生命体の病変としてとらえる。東洋医学の考え方としては、人間にはもともと自然治癒力が備わっており、常に襲ってくる細菌やウイルスなどの病原菌と戦って、生命を維持する能力を発揮している。自然治癒力がこの戦いの主戦力となり、戦いの結果、体の自然治癒力が勝てば「健康」、負ければ「病気」や「死」につながる。東洋医学の治療はこの戦いの中で援軍の役割を果たし、体の自然治癒力の手助けをする。同じ病名でも人それぞれの体質に適応した援軍(人によっては異なる薬)を送らねばならず、医師は脈や舌、患者の訴えや体調などにより患者の体質を見分け、その体質に処方をする。そのため基本的にオーダーメイドの処方を組み合わせて治療する。
 治療では、人間の自然治癒力を高めることを主眼においている。全身の「陰陽」、「五臓六腑」の協調性は自然治癒力を高めることを主眼においている。全身の「陰陽」、「五臓六腑」の協調性は自然治癒力を発揮できる基本条件で、東洋医学で、東洋医学の治療は、この協調性を壊さないよう丹念に工夫されており、人体の抵抗力を発揮させることを治療の要とすれば、副作用危険性は少なくなる。(漢方薬は天然のものであり、副作用が無いとしばしば誤解されているが、体質や五臓六腑の気血、陰陽のバランスを見極めないと重大な副作用が現れる恐れがある。)
 人によっては東洋医学の「陰陽」や「五行」、「五臓六腑」、「気血水(津)」などという漢字を見ただけで、何やらわかりにくそうなイメージを抱き、敬遠してしまう。しかし、これは古代の人が自然や自分自身をよく観察した結果を要点をしぼってまとめ、呼び方を決めたもので、例えば、カゼをひいたとき実際にウイルスの姿を見られなくても何らかの体に悪い影響があるものの存在を見出し、これを「邪」と名づけた。そして体の抵抗により引き起こされた症状の違いにより、「邪」の種類をおおまかに区分して「寒邪」、「熱邪」、「風邪」、「温邪」、「繰邪」、「暑邪」、「火邪」、とそれぞれ名づけた。
 「陰陽」とは
 昼があれば夜があり、夏があれば冬があり、表があれば裏があるというように、自然は常に二つの側面で構成されている。古代の人々は、このような自然現象をよく観察した上で、すべての自然が二つの側面の組み合わせからなり、その現象を「陰」と「陽」と呼び、独自の宇宙観を作り出した。自然を「陰」と「陽」に分類すると反対の性質を持つ。
 陽 天 熱 火 上 左 背 上半身 表 外 昼 日 気(パワー)
 陰 地 寒 水 下 右 腹 下半身 裏 内 夜 月 血(血液)
 「陰」と「陽」の分類は以上に述べたような厳しい自然の法則に従って相対的に行われる。しかし、一つの物でも見る角度によりいろいろな分け方ができる。例えば、肉体は「気」に対して「陰」に属するが、肉体の中でも背部は腹部に対して「陽」に属する。反対に腹部は「陰」に属する。内臓は体表に対して「陰」に属するが、内臓の中でも胸部(上部)の臓器の肺や心臓は腹部の臓器に対して「陽」に属する。腹部(下部)の臓器は「陰」に属する。このように比較する対象に従ってそれぞれ具体的な「陰」「陽」の属性を示す。こういった多方面からの「陰陽」の区分の結果、「陰」の中に「陽」があり、「陽」の中に「陰」があるという考え方は自然に起こる。これは文字の遊びではなく、以上に述べた法則により分類を行った結果で、体を一つの生命体として扱う方法の理論的な基礎になり、複雑な生命体をピンポイントのとらえ方でなく、正しく解明するために役立つ。
 東洋医学の中にも「陰陽」の考え方は深く浸透している。例えば、「陰」は物質的な意味を持ち、体自体やその滋養成分を意味する言葉である。「陽」は機能的な意味を持ち、臓器の働きや動く能力など(東洋医学ではこれを「気」という)を意味する言葉である)
 体の各機能を正確に動かすために、滋養成分や各臓器があるが、これだけがあっても「気」がなければ、各臓器は動かない。このように「陰」と「陽」は密接に関係しあい、お互いに欠かせないもので、体の「陰」を滋養し一定の規律で動かすためには「陽」が必要で、「陽」を正しく活動させるためには「陰」が必要である。また、体の「陰」と「陽」のバランス状態は常にくずれており、バランスがくずれても薬などに頼らず自ら回復することが出来れば、健康であると言える。そのバランスが崩れて回復できなければ、「未病」(発病する前の体調不良などの状態をいう)になり、進めば「病気」になる。体(陰)から気(陽)が離れてしまうと死に至り、「陰」と「陽」はお互いにしっかりと結ばれていなければならない。
 このため病気が「陰」性であるか「陽」性であるかを知ることができるが、それと反対の性質を持つ食べ物や薬を服用してそのバランスを取り戻すのが東洋医学の基礎的な考え方だ。
 ・陽 熱っぽい、発作を伴った炎症、分泌液が粘って黄色い。
 ・陰 寒気、蒼白くて難治性の皮膚潰瘍(陰性疸)、分泌液が清らかでサラサラ
 詳しい陰陽理論を、ここでいっぺんに全て理解することは難しい。大切なのはこのように体には「陰」と「陽」の両側面がある事実を知り、日頃から絶えず変化している「陰」と「陽」を正しい生活習慣でそのバランスを回復出来るように努力することが大切である。しかし、そのバランスを正常化するためにもし「陽」が不足していれば「陽」のものだけをたくさん摂ればいいのかと言うとそうではない。食事や薬を摂るときも「陰と陽のバランス」を考え、一方ばかりに行き過ぎないようにしないと、逆に体を壊してしまう場合もたびたびある。例えば体が冷えているからといって体を温める作用がある「辛味」のある食べ物ばかり続けて摂ると、逆に体に熱がこもり、目の充血や喉が乾くなどの症状(体に熱がこもっている症状)を生じる恐れがある。
 各臓腑にはそれぞれの「陰」と「陽」の両側面があり、その「陰」と「陽」の両側面があり、その「陰」と「陽」のバランスを考えると同時に、全体の「陰」と「陽」のバランスを考え、偏り過ぎず行き過ぎずにすることが、漢方の「陰陽論」の根本で大切な考え方である。

漢方女医さんの話②

 五行説の漢方医学への影響
 「陰陽」に次ぎ、東洋医学で重要な説は「五行」である。古代中国人は万物が五つの要素(木、火、土、金、水)の運動変化により成り立っていて、五つすべてが欠けてはいけない基本物質であると考えた。
 「木」というのは、発芽・伸びる・発達するなど、木のような性質のあるすべての物を言う。
 「火」というのは、温熱・炎のように上昇するなど、火のような性質を持つすべての物を言う
 「土」というのは、万物の生長の源、万物は土に帰るなど、大地のような性質を持つすべての物を言う。
 「金」は変革・降る・沈む・統合するなどの、金属のような性質を持つすべての物を言う
 「水」は滋養・潤す・下の方向に流れる・冷たいなどの、水のような性質を持つすべての物を言う。
 五つの要素には、互いに生み出し(相生関係)、互いに抑制しあう(相克関係)という関係がある。
 漢方医学理論も「五行説」と深く関連づけられる。特に臓腑(五臓六腑)と五行説との関係が重要で、生命体は大まかに五つのシステムからなり、上述のような働きで、互いに生み出し(相生)、互いに抑制しあう(相克)ことにより、各システムは高まりすぎず、抑制しすぎずバランスをとって正常に機能を保つ。この五つのシステムは中心的に関わる臓の名がつけられているが、その働きの範囲はその臓をはるかに超えている。
 例えると、黒い食材や塩味が「腎」のシステムに欠かせない物で、「腎」は水と関連するシステム、「心」は赤・苦味が必要で火(パワー)のように体を温めさせるなどに関連するシステム、「肝」は緑・酸味が欠かせず、木のように自分のペースで伸びるのが大好きで、思い通りにならないとイライラしてしまう、「肺」は白・辛味が欠かせず金、「脾」(胃・腸・脾など消化吸収と関わるもの)は黄・甘味が欠かせず、様々な飲食を受け入れ消化吸収することが大地のような特徴なので土と比喩されている。
 五臓の「相老」の角度から見れば、土から金が得られるというのは、腸・脾(脾土)の消化吸収がうまくできれば肺気(金)の補充も得られる(「土生金」)と言う)ということを意味する。また五臓の「相克」の角度から見れば、怒りを司る「肝」(「木」とされている)が、高まりすぎると「脾」(「土」とされている。)に悪影響を与えること、例えば、激しく怒った(「肝」のシステムの機能)がなくなる。こういった現象は木が土を崩すことに比喩される。(木克土)と言う)。
 しかし、その五つのシステムのバランスも配慮しなければ上手くいかない。
 一つの例で説明しよう。腎のシステムに対して、塩味はそのパワーに欠かせない物だが、少量であれば充分で、スムーズに機能する。摂りすぎると心のシステムをはじめ(高血圧、心臓の負担になる)、脾(大量の水分を受けなければならず、脾の機能が低下して糖尿病の恐れがある)などの他のシステムのバランスが崩れ、進めば大量の水分を排泄するため、腎の負担となり、血糖などの成分が高まって糸球体の血管に与えるダメージが大きくなる。

漢方女医さんの話③

「気」や「血」、「津液」とは?
 気、血、津液とは東洋医学の考え方で、これらは絶えず全身を巡り、機能を維持、活性化させ、五臓六腑の機能が互いに調和した状態を保つために欠かせないものと考えられている。
 「気」
  気は「陽」に属し、絶えず決められた経路、一定のペースで体を巡り、体や臓腑の機能を司る。体を温め、血液、、体液を巡らせ、そのことにより五臓六腑に栄養を与え、免疫力を保つなどの働きを持ち、五臓六腑の正常な活動を維持する。気がスムーズに体を巡ると心身ともにのびのびとした気持ちになる。
 ところが、気の巡りに何らかの問題があれば、五臓六腑に悪影響をおよぼしてしまう。例えば、気が昇り上に集まりすぎて熱が上半身にこもると「肝陽上コウ(カンヨウジョウコウ)」という状態になってしまう。これは過労や激怒によって引き起こされ、高血圧などの症状も起こる。気の巡りが滞れば、「気滞(キタイ)」という状態になり、気づまりして胸と脇が苦しい感じになったり4,イライラしたり、お腹が張ったりする。これは、主に怒り、うつ、くよくよ、運動不足などによって引き起こされる。
 気が不足すれば「気虚(ききょ)」という状態になり、少し動くと息切れし、疲れやすくなる。これは、主に運動不足や胃腸が弱いために栄養分の吸収障害が起き、気(パワー)が弱くなったり、過労によって気が損なわれたりするなどが原因である。
 気は体を温める機能があり、この機能を担う部分を「陽気」と呼び、「陽気」が不足すると全身の冷えやしびれ、重い痛みなどの症状が出てくる。これは「陽虚」という状態である。
 また暴飲暴食により気の巡りを阻滞させてしまう場合もある。それが原因で様々な機能低下を起こす。例えば、脾の働きの低下や性機能低下などを起こしやすいといったものである。つまり、糖尿病やインポテンツなどの病気にかかりやすくなる。
 「血」
 血は陰に属し、血液のことを指す。血はサラサラで、体の隅々まで巡るのが良く、各組織を活性化させる働きがある。血が不足すると「血虚」とよばれ、貧血やめまいが起こりやすく、とり目になることもある。「血虚」の状態が長く続くと気にも悪影響をおよぼし「気虚」にもなる。これを「気血両虚」と言う。
 血の巡りは気の巡りにリードされる。気の巡りが滞ると血の循環も悪くなり、これを「気滞うっ血」と言う。こうなると、体のあちらこちらに刺すような痛みを感じ、血の巡りが悪いため、各臓器の働きも弱くなり、消化吸収の機能も低下し、気と血の生成にまで悪影響を与えてしまう。更にうっ血状態が気の巡りにも悪い影響を与える悪循環が起こる。
 他に、生活習慣病といった病気では、生活リズムの乱れや暴飲暴食、ストレスなどによって、老廃物が体内に蓄積し、気の巡りが悪くなる。さらに血行が悪くなったり、血液に熱がこもったりすると、頻脈や動機、若年白髪、不眠などの症状を引き起こしやすくなる。
「津液」
 「津液」は「陰」に属し、血以外の内、外分泌液や体液など(例えば、汗、唾液、涙、鼻水や関節の滑液や脳内の液などの液)を「津液」と呼ぶ。「津液」は血管を流れる血液と絶えず交換し合っている。
 体液の巡りが悪くなったり、体内の水を処理しきれなかったりすると、水が体の細胞や細胞間、軟部組織などにたまり、浮腫や糖尿病、腎炎、アレルギー症状などを引き起こす一因となるため、「湿邪(シツジャ)」と呼ぶ。
 大汗や大出血などにより津液が不足すると乾燥状態になり、乾燥肌、目の乾燥、空咳などの症状が出やすくなり、体の機能に悪影響を及ぼす。

written by 就労継続支援B型事業所 ユアライフ新大阪