横田慎太郎選手への思い出
ABCテレビ、テレビ朝日系列で間宮祥太朗さん主演で、ドキュメンタリードラマとして放送された、奇跡のバックホームが見てよかったので、書籍の方の『奇跡のバックホーム』を買って読んだのですが、やっぱり素晴らしい感動があったので、横田慎太郎さんの野球人生を語ったこの本について書いていきたいと思います。
まず横田選手への思い出として僕が覚えているのが、金本監督の元『超変革』のスローガンで始まった2016年の開幕戦、1番新人の高山選手、そして2番に高卒3年目で抜擢された横田選手のスタメンを見て、これから阪神の新しい歴史が始まるだ!とすごく興奮をしたのを覚えています。
そして高山選手はそのまま新人王と取る活躍をしたのですが、横田選手は上手く結果が出すに5月初頭に2軍落ち。それから次の年になり、高山選手も成績が残せず苦しむようになるのですが、横田選手の方は体調不良とだけ発表をされて、2軍の試合にも出ていないようになりました。なので、一体どうしちゃったのだろうと不思議に思っていたら、その後に脳腫瘍という重い病気だったことが発表されて、育成選手として背番号も124番という三桁のユニフォームになりました。だから、早く体が良くなればいいのになと、イチファンとして思っていました。
しかし、病状は良くならず、結局、2年後育成選手のまま引退となり、ニュースで横田選手が二軍の引退試合で八回からセンターにつき、センターの当たりをノーバウンドのバックホームで返して、ランナーを本塁で刺したシーンを見て、横田最後に一花咲かせて良かったなと、ジンワリと感動したのを覚えていますが、そのバックホームのシーン、それはまさしく『奇跡』と呼ぶに相応しいプレーだったことを、本書を読んで知りました。
奇跡のバックホームの内容
本書は奇跡のバックホームのシーンから始まり、それから、幼少時代から横田選手の父親もプロ野球選手だったこともあり、ただひたすらに『プロになるんだ!』という夢の元、努力をして野球の練習に励む姿が表現されています。
その願いが叶ってドラフト2位で阪神の選手となり、2年間の2軍生活のあと一軍のスタメンを勝ち取り、開幕2番センターで迎えるのですが、そこで低迷。
その後、また1軍を目指すのですが、そんな時に激しい頭痛と視界がぼやける症状が出て、検査をしてみると脳腫瘍だと診断をされます。
そこで、まず野球が出来ないことに絶望を感じる横田選手だったのですが、そこでも『何が何でもまたグランドに戻るんだ!』という強い信念を持ち闘病生活と戦っていきます。
そこでの最初の試練が手術。2回受け、2回目の時は18時間にも及ぶ大手術で、手術は成功するのですが、最初の2ヶ月間は失明状態で何も見えなくなったこと。
そんな状態なので、本当にグラウンドに戻れるんだろうかと落ち込むのですが、それを助けたのが家族。お母さんは故郷の鹿児島での仕事を辞め、大阪の病院で闘病生活をする息子を毎日支え、お父さんは、抗がん剤治療のため全身の毛が抜けた息子を励ますため、自分も坊主にするといったサポートを経て、横田選手は退院をし、グランドへ戻ることができました。
それから、最初は幼稚園児クラスの野球練習から始まり、徐々に高校生、プロレベルと、体の方は病気前へと近づいていくのですが、目の方は球が二重に見えたりするなど、改善されず、スカウトの田中秀太さん「苦しかったら、今年で辞めていいぞ」という一言もあり、もうこんな状態では一軍は絶対無理だという苦しい現実から解放されるため、引退を決意します。
奇跡のバックホーム
そうなのです。だから引退試合の時も横田選手は、球がぶれて二重に見える状態だったので、とても打球処理などができる体ではなかったのです。
なのに、しかも距離感もつかめないセンターライナーの打球が飛んできたので、もう処理できるだけで『奇跡』なのでした。しかも、その球をノーバウンドでバックホームしてランナーをアウトにするというのは、健康体の時でもできなかったプレーらしいので、まさしく奇跡のバックホームと呼ぶに等しいモノでした。
このプレー、怖がって後ろに下がってボールを捕球していたら、球を捕ることすら出来なかっただろうと本人は語っています。野球人生の最高のプレーを、引退試合の病気の状態でできた。このことは、その時、2軍の試合を1軍の選手たちも見に来てくれていて、その中の一人鳥谷選手が「野球の神様って、本当にいるんだな」という言葉に共感し、何か自分の力だけではないモノを感じたと書いてありますが、僕は素直に本人の闘病生活にも負けなかった努力が、実を結んだんだと思いました。
苦しいことの後には、いいこともある。そんな奇跡のプレーをした横田選手は、本書の最後で『どこかで、もういいやと思っていたら、あのプレーは絶対になかった。だからみなさんもどんなにつらいこと、苦しいことがあっても、たとえ小さな目標であってもいいから、それを見失わずに、がんばってほしい』と語っています。
僕も発達障害という障害を持っていて、実は夢もあるんですが、どうせ無理だろうと投げやりな気分になっていました。しかし、本書を読んで『神様はいるはずだ、がんばっていこう』と勇気をもらいました。
横田さんは、そんな苦しい思いをしている人の勇気になればと、本書を書いたと動機を語っていますが、正しく僕には奇跡のバックホームが届きました。
人生に投げやりになっている、不遇な待遇に対して負けそうになっている、そんな人にオススメしたい本書です。